黒子 花2022年10月25日49 分『勇者に忘れられた作業奴隷、勇者が死に無一文で解放される。薪割りと採掘しかできない裸のアイツが魔界の勢力図を書き換えるまで』311話「草国の木とは」 揺れていた。 大きく息を吸うと、緑の臭いが体の中に入ってくる。 「起きたか。奴隷の国の者よ」 ドライアドが牛車を操っていた。俺は荷台の檻に乗せられて、大きな木の枷を足と手首に付けられている。斧もつるはしもなく身動きは取れない。よほど俺を自由にしておき...
黒子 花2022年10月25日51 分『勇者に忘れられた作業奴隷、勇者が死に無一文で解放される。薪割りと採掘しかできない裸のアイツが魔界の勢力図を書き換えるまで』25「暗い地下の光」 朝方、隠れるようにして馬車に乗り込み、町を出た。俺の顔が割れているので、町の人たちが引き止めに来ると髭の教官は言っていた。 「町では知らない人を引き止めるのか?」 ジルは眠そうにして正面に座っている。...
黒子 花2022年10月25日38 分『勇者に忘れられた作業奴隷、勇者が死に無一文で解放される。薪割りと採掘しかできない裸のアイツが魔界の勢力図を書き換えるまで』11話「捨てられた奴隷・前」 配達人がやってきたのは、ある晴れた昼日中(ひるひなか)だった。 奴隷の俺には文字が読めないので、代わりに配達人が手紙を読んでくれた。 「勇者は魔王討伐の3ヶ月後に原因不明の病により死亡。勇者の所有物を確認していたらこの土地も含まれていたようだ。奴...
黒子 花2022年7月1日28 分『お備えさ~ん』経験は思考から生まれ、思考は行動から生まれる」 ベンジャミン・ディズレーリ 1 柔らかい春の風が、山道にそよいでいる。 トラックが一台通れるほどの道幅しかなく、両側は新緑に覆われ、白かったガードレールも茶色く錆びていた。 「日陰は寒いな」...